人間の業


入墨とはどのようなものか書いていきたいと思う。

まず、彫師と客、2人の共通作業で形を与えられた瞬間から
視線のるつぼにたたき込まれるのが背負う宿命である。

それまでのさまざまな思惑や葛藤を離れて、
社会的な対象として見られるものへと転換する。

そして、いのちのあるあいだ、刺青があるという事実が、消えることはない。
いってみれば、そのことこそが刺青のもっとも刺青らしいところだといえる。
お刺青は、身の内に取り込んだ自分の一部調り、
二度と取り換えのきかない装いでもある。

そこのところが身にまとうものとの違いになり、
しかもそれは見られることを想定している。

みられること、他人の視線を欠落させた刺青は考えられない。
もちろん、これは見せるものにあらずというのも、
また郷人の秘密だと理屈づけてみせるのも、それは見せることの変種であり、
裏返しの意味でしかない、姫の中のたった叫人のための刺青はあっても、
誰にも見せない刺青、人の視線をまったく予想しない刺青はない。